素粒子

ファインマンルールの謎

前4年生がコンプトン散乱の解析をする研究をしていた。

1stオーダーの摂動でM行列を計算するものだったが、あまりの計算量の多さに一部を計算するに止まった。

見ればコンピューター解析でもA4用紙で十数枚の計算結果だ。

とても手計算では手に負えないだろう。

そう、コンピューターがなければ、現代のファインマングラフの研究はできないといっても過言ではない。

手計算で追いつかないのは、能力の限界でもある。

何が言いたかったかというと、つまりは自然の理解には限界があるのではないか?という疑問があること。

もちろん、人間にとってだ。

ファインマンルールは劇的に散乱振幅の計算量を減らした。

それにより、大掛かりな昇降演算子による計算の手間が省けた。これは大きな功績であり、進歩だ。

では、これと同じ状況が今後も続いていくのか?

科学は進歩を続けるか?

果たしてstring理論を実験的に確認できるまで、人類の科学力は進歩できるのか?

大いなる謎だ。

むしろ、自然の構造云々よりも、人間の能力によって科学は支配され、世界は理解されるのではないか?

そう思う今日この頃である。

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Asymptotic Freedom

今日はクリスマスイブsign01xmasxmas

研究室には昼間、修論を執筆する院生が数名pencil

4年生はやはりこない。今日と明日、彼らは彼女とnightを明かすのだろう

(ノ_-。)

クリスマスイブを彼女と過ごすか、研究室で一人過ごすかは…

自由だsign03(。>0<。)

研究室 is Freedom 研究室 is Freedomnote

Asymptotic Freedom  Asymptotic Freedomnote

先生と二人、古いコンピューターの最適化に取り組む。懸念していた通り、AVのファイルが出てきて苦笑い。

うーん、K先輩はアニメ系が好きだったのか

このコンピューターを受け継ぐK君が使うのに支障がないように、とのことだが、肝心のK君はすでに帰宅。イブを先生と過ごすことになった…

。゜゜(´□`。)°゜。

* * * * *

教科書レベルの話だが、修論にAsymptotic Freedomを盛り込むことに決める。2004年のノーベル賞を受賞した研究だし、Coupling constantを、繰り込み群で調べる研究をしているからには、避けて通れない話題だろう。

Asymptotic Freedomとは、高エネルギーで結合定数が小さくなる現象のことである。核力や、クォーク間に働く力(強い相互作用)に代表される特筆すべき性質だ。結合定数が小さくなれば摂動論が有効になり、近似がうまく機能する。逆に大きいと、解が発散していくために摂動論が使えなくなる。

強い相互作用では、こんな感じに変化する。

Asymptotic2_01_2

低エネルギーでは発散してしまうため、摂動論が使えない。今の場合は、陽子や中性子など低エネルギー束縛状態にあるハドロンが当てはまる。

逆に、高エネルギー粒子を衝突させる実験では、 摂動論が有効だ。高次のオーダーまでガンガン計算できる。

ではCoupling Constant(結合定数)とは何かというと、平たく言えば電磁気でいうところの電荷のことだ。古典論では

_01_2

このようなイメージ。

では量子論ではどうなるかというと、真空偏極の効果が加わるため、下のように奇妙なダイアグラムが飛び回る(画像をクリックすると動きます)。

Photo

なんと恐ろしいthunder

 

sign02Σ(`0´*)

これはいわゆる遮蔽効果で、真の(裸の)電荷は弱まって観測されることを表している。高エネルギーではより近距離まで探索できるから、真の電荷をより精密に観測できる。こうして、系のエネルギーで電荷の大きさは変化することになり、先のようなエネルギー依存性が生まれるのだ。

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ゲージ理論の量子化Ⅰ

今日はクリスマスイブイブxmas

研究室には誰もいない。

これより数日、4年生(全員彼女持ち)はきっと彼女とnightを過ごすのだろうshine

(ノд・。)

妬みではありません(゚ー゚;

* * * * *

最近、研究室でPath Integralが流行している。正準量子化と並ぶ有力な量子化法でありながら、何故か素粒子以外ではあまり使われない。

そんな流れに対抗しようと、去年の4年生が卒業論文で、通常の量子力学にPath Integralを取り入れ、量子井戸を始めとする問題にアプローチする研究に着手。量子モンテカルロでシュミレーションした研究は、プラズマ物理の権威I先生に高く評価された。

そんな流れもあってか、今年もPath Integralの研究をする4年生がいる。今度はさらに一段掘り下げ、古典論をPath Integralで焼きなおすという。

えらいこっちゃ Σ(・ω・ノ)ノ!

先生曰く、高価な日本刀で果物を切る、といった例えらしい

例えの意味は、考えてみて下さいbleah

ということで、久しぶりに物理談義sign03Path Integral でゲージ理論の量子化を実行してみたいと思います。

ソースjを持つ自由電磁場に対するGenerating functionは以下の形にかける。

Gauge_quantum2_01_2

ソース項は相互作用の項で、電磁気の場合はゲージ場とフェルミオン場の三点相互作用。

電磁場の量子化は、一般には容易と言われるが、実は落とし穴がある。ベクトル場の零成分の時間微分

_01

がラグランジアンに含まれていないことだ。このことは、量子力学の正準交換関係を見てもわかる。

_01_2

上の式において、pはxの時間微分だから、正準備量子化には時間微分項(零成分)が含まれてしまうsign02

一方、理論のラグランジアンには時間微分項が入っていないわけだから、ベクトル場の零成分は力学変数ではない。

この矛盾、どうやって解決しようΣ(゚д゚;)

解決するには、特定のゲージを選び、ベクトル場の零成分を削除してやればいい。このゲージの選び方は無数にあって、例えばここではCoulombゲージを選んでみる。

Coulomb_01_2

こういった条件を課して変数を減らしてやれば自由度が減って、零成分を落としていいことになる。

これで量子化完了かhappy02

と思いきや、まだまだ難所があります。

続きはまた次回pencil 

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SU(5)モデル

Wess Baggerは佳境に突入したが、どうにも面倒くさい計算が続いて萎えている。

Propagaterの導出で、本来なら数ページかかる計算をたったの一行で済ませていいものだろうか。

疑問に思うcat

ということで、ちょっとその仕事を投げ出して、SU(5)の大統一理論に脱線中。

SU(5)などの理論を詳しく調べるには、表現論が必要不可欠になるが、僕は必要になったらやるタイプなので、今になって群論に苦戦bearing 

でも、やる時は徹底的にやります。師匠に曖昧な理解は絶対しないように叩き込まれているので(*^ー゚)b

SU(5)に代わる候補としてSU(3)×SU(3)モデルが駄目なのは、チャージの対角和がゼロにななり、実際のu,dクォークのチャージの和がゼロにならないことと矛盾するかららしいが、なぜu,dクォークだけで考える必要があるのだろうか?一世代限定でゲージ変換を考えるからか?いや、しかし小林・益川行列は世代混合を許しているではないか。

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祝!ノーベル物理学賞受賞

今年度のノーベル物理学賞は南部、小林、益川の三氏に贈られるとの速報がnew(゚▽゚*)

三人全員が日本人で、しかも素粒子なのはかつてない快挙shine

おめでとうございます。

速報によれば、対称性の自発的破れに対する研究業績に対して与えられたのだとか

特に南部先生は、多方面で開拓者的な業績をあげて、これまでノーベル賞候補に何度も挙げられながら、さんざん受賞を逃してきた。八十を越えてもなお、各大学を飛び回って講演やら研究会やらに顔を出している姿は、まさに研究者の鏡。

各先生方の業績を簡単に説明すると、

南部先生は対称性の自発的破れが、素粒子の相互作用でも起こることを初めて理論に持ち込んだ。これは粒子の質量生成機構とも密接に関連し、今日では欠かせない概念となっている。

小林・益川の両先生といえば、なんといっても小林・益川行列だと思う。

先生方は、CP対称性が破れていることを理論から導きだすには、三世代以上の粒子が必要だと主張した。二世代以下のモデルではCP対称性を破る機構を説明できない。小林・益川の三世代混合行列では、対称性では打ち消せない余計なパラメーターが残るため、これがCP対称性を破る原因になっていると考えられる。

後に見事、三世代の粒子はめでたく観測され、理論は実証されたflair

師匠は院生時代、小林先生と席が隣だったらしく、なんと当時助手だった小林先生は、この自らの業績をおおっぴらにしなかったそうだ。周りが騒ぎ出してから、小林・益川の理論は重要性が認められた。後にノーベル賞を受賞する研究業績だとは、最初は誰も思っていなかったのかもしれない。

それにしても、ノーベル賞級の研究が理解できると、感動もひとしおのものがある。前回は、ニュートリノの研究でも、まだ高校生でさっぱりわからなかった。こういう感動も、学問を続ける一つのモチベーションになる。

ひそかに、世間で素粒子ブームが起きるように、祈っちゃったりして(o^-^o)

これでまた、日本の素粒子界に新たな風が吹き込まれることを期待したい。素粒子研究の素晴しさを見直すことに繋がってくれたら、いいなと思うsunhappy01

先生方、本当におめでとうございますm(_ _)m

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LHC稼動!その2

先日、LHCの稼動について書いたが、書いた矢先、もうストップしたらしい(^-^;

配線トラブルで、冷却に使うヘリウムガスが抜けたとか。

あれだけ巨大な実験装置だから、多少の故障は当然ありうることだが、それにしても、いつになったら正規の実験ができることやらtyphoon

今週先生が学会から帰還した。

稼動の時、NHKでニュースが流れたらしいが、うちの研究室出身のE君が映っていたらしい。先生はそのE君と偶然、学会で会ったそうだ。

E君曰く、LHC関連の話題は今が最盛期らしく、とてもトークがきける人数ではなかったと。

彼はLHC関連の実験家だから、今、もっとも忙しい。

僕ら理論家、とくにモデル専門は、彼らに首を絞められる運命に…( ̄○ ̄;)!

* * * * *

お決まりの、先生との会話

W君:「LHC止まったみたいですね。次回稼動予定は2ヵ月後だとか」

先生:「しかし、出てくるのはゴミの山やでな」

僕:「ゴミ?」

先生:「そやで。ゴミのジェットからいかに宝を探すかやん。解析が大変なんやで。結果なんていつ出るかわからへん」

一同:「…」

* * * * *

ちなみに、ゴミとは新現象とは関係ない粒子のジェットのこと。ハドロン同士の衝突ではこのジェットが大量にでるから、新粒子発見のために、バックグラウンドの差し引きが重要になってくる。

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LHC稼動!

LHCが稼動を始めた。周回ビームの生成には既に成功しているようで、これから本格的な衝突実験に入るようだ。

Higgsボソンを始め、超対称性理論、ミニブラックホール生成による余剰次元の検証、等々目玉企画が目白押し( ^ω^)

のはずですが、我らの師匠は実に現実的な意見を…

僕 「LHCついに稼動しますね!」

先生 「そやけど、まあ、何も見つからんちゃうの?」

僕 「余剰次元や超対称性が確認されれば、科学の一大革命ですよね?」

先生 「確かなのは、モデル屋は大半がふるいにかけられることやな」

確かに、超対称性理論他、何も見つからなかった場合は、その方面の研究者は多少方向性を修正しなければいけないかもしれない。この実験の次は、仮にもっと強力な加速器が開発されたとしても、ウン十年先の話になってしまうから、検証に基づく科学をやるためには見直さないと、ただの空想で遊んでいただけで人生が終わってしまう。

また、そういった理論の証拠が見つかったら見つかったらで、それに否定的なモデル、理論を研究している研究者は職を失うだろう。

いずれにしても、キラ星のごとくある理論モデルは、この実験で淘汰されることになるbomb

恐ろしやヾ(.;.;゚Д゚)ノ

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超対称変換

Wess Baggerがようやく波に乗り出したpencil

ラグランジアンの構成には、なんらかの制限を課す必要があるが、supersymmetryの場合は通常に比べてかなり複雑になる。

まず、超対称変換で作用が不変かどうか確かめなければならない。補助場とか入ると、計算量は倍になる。

ねちねちした計算で、もううんざりbearing

ワインバーグサラムなら、SU(2)×U(1)のゲージ変換だけを考えればいいから、この手の計算は楽だ。もっとも、ハイパーチャージで複雑になることは、なる。

R不変とか、誰が考えたんだろうfish

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8月

いつの間にか八月にcoldsweats02

修論は、超対称性理論か弦理論にするかで思案中。弦理論ではやりのADS/CFTは、あまりにもやられている仕事が多すぎて、オリジナルな仕事ができなさそう。

なんといっても、先生が完全に僕に判断を任せているので、下手な題材を選ぶわけにはいかない。失敗して

卒業できませんでしたcatface

では、洒落にならないし

理研のH先生が取り組んでいる、弦理論からのバリオンやグルーボールの計算は、物理現象に結びついているし、おもしろそう。

先輩の修論を参考にしつつ、考えるtyphoon

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GS-action

今日は一日中GS-actionと格闘していた。GS-actionはsuperspaceでフェルミオン項をすべて表現するため、見通しがよい。

作用の変更としては、南部後藤の弦にsuperspaceをいれれば、それでよい。κ対称性を加える分だけ計算が大変にはなるtyphoon

κ対称性は強力だ。一気に自由度を1/2落としてしまうimpact

作用から運動方程式を導くのは一苦労で、束縛条件の使い方に難があったため、時間がかかってしまった。

GS-actionはあまり有名ではないのかもしれない。ポルチンスキーの教科書では省略されているし、弦場の理論で大御所であるI先生に聞いてみたところ、

「よく知らん」

と一蹴された。

今日はこれからF君の送別会兼先生の還暦祝いbeer

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素粒子界

研究室にO氏が来訪している。O氏はかつて研究室に在籍していたこともあり、毎年、この時期にやってくる。

そのO氏から、現在の素粒子界の話を聞かせていただく。

素粒子界は非常に厳しい。研究だけで食べていこうとすると、研究業績を重視する大学・研究所に就職するしかないが、そのようなポストは空きがほとんどない。

運良く空いたとしても、一つのポストに何十人ものOD(オーバードクター)やドクター取得予定の学生が群がるため、その競争率ははかり知れない。

研究だけを専門としない就職口もある。情報処理や工業関係の授業をしながら、研究を続けていくというポストだ。

そのようなポストは、主に地方の教育機関となる。

地方の教育機関では、研究業績より教育能力を重視するそうだ。少子化の影響もあって、定員割れに悩まされているため、教育能力の高い人材をほしがっている。

年齢の問題もある。30歳を過ぎると、一般企業での就職が、まずなくなってくる。35を過ぎると、研究職もなくなってくる。

大変に厳しい世界だ。

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Dispersion Relation(分散関係)

素粒子論の分野に、Dispersion Relation(分散関係)を論じるものがある。

S行列を計算するときに、振幅と呼ばれる物理量を導入すると、それがその振幅の虚数部分を積分したものになるという、不思議な性質が現れる(ここでも複素数が活躍する!)。

この関係をDispersion Relationと呼ぶ。

このDispersion Relation、何が重要かというと、振幅の虚数部分が全散乱断面積に関係していて、その実験結果から、振幅の形が予言できるところにある。

振幅の形が分かれば、それがファインマンダイアグラムを知ることになり、どのような散乱過程が起こったのかを知ることができる!

このような研究は、1960年代にさかんに行われた。それはゲージ理論の一般論が登場する前で、まだ、強い力の基礎理論であるQCDが知られていなかった時代だった。

この時代には、このDispersion Relationが唯一の強い力を解明するための手段だと考えられていた。

このDispersion Relationは非常に解析的である。このような素粒子論を数学的に解析する流れはその後、QCDや弦理論に受け継がれていく。

Dispersion Relationは強力であって、素粒子論に対する有効性は今も昔も変わらない。

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QED TO SECOND ORDER その3

ここのところ、2次の量子電磁力学の話題を書いているが、いろいろ分かりづらいので、ここで全体をまとめておく。

2次の量子電磁力学(QED)は場を6つ含み、Wickの定理で分解すると、6通りの現象が現れる。

1.Disconnected term

これは分裂したファインマングラフを表し、M行列に対する寄与はゼロである。

2.消滅と交換

光子の場がプロパゲーターとなった場合であり、場の縮約を1つ含む。そのグラフは次のように書ける。

Photo_14

e-は電子で、e+は陽電子を表す。左は電子と陽電子が消滅し、結合して光子になり、また分裂して電子と陽電子になる過程を表している。右は光子は交換するが、電子、陽電子は影響を受けず、散乱する過程である。

これは上のファインマングラフから、ファインマン則を用いて、M行列を計算できる。

3.コンプトン散乱

これは電子と光子の相互作用で、フェルミオン場がプロパゲーターとなる。

4.電子の自己エネルギー

光子とフェルミオンのループを含む過程を表す。

5.真空偏極

これはまだ触れていないが、フェルミオンの場の縮約を2つ含む場合であり、フェルミオンのみのプロパゲーターからなる、ループを含む。これについてはまた後日、書きたいと思っている。

6.Vacuum bubble term

真空泡の効果を表す。これはすべてがプロパゲーターであり、現実の観測量には影響しない。

上の過程のうち、1、3、4、6は以前の日記で解説した。

* * * * *

以上が2次のQEDの効果だが、これだけでも相当豊富な内容を含んでいる。そして、その現象の一つ一つが、高い精度で実証されていることもあり、QEDは非常にエレガントな理論である、と評してもよいだろうと思う。

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QED TO SECOND ORDER その2

さらに2次のオーダーの量子電磁力学を見ていこう。

M行列のうち、光子の場の縮約とフェルミオンの場の縮約を含む効果は、地道に場の量子論で計算すると、以下のファインマンダイアグラムで表せることがわかる。

Photo_12

場を縮約すると、プロパゲーターが現れることに注意すると、今は2つの場を縮約したから、プロパゲーターが2種類出てくることになる。

それが上の波線の光子と、下の実線のフェルミオンに対応する。

右の実線が運動量P1を持つ電子、真ん中の波線が運動量Kを持つ光子、真ん中の実線が運動量P2-Kを持つフェルミオン、左の実線が運動量P2を持つ電子である。

真ん中は波線と実線のループになっている。このようなダイアグラム(ループ1個)を1ループダイアグラムと呼ぶ。

同様に、2個、3個とループがある過程も高次では現れる。

この過程はどんな物理現象を表しているか?

やってきた電子が光子とフェルミオンのループ(上の図から)の過程を通り、運動量を変えて電子に戻っている。

…?

これは電子の自己エネルギーの過程と言われ、自己相互作用を表す。1個の電子には、常にこのようなループ過程が存在する。

この過程からどのように有限な物理量を引き出すか?

実は、それは非常に難問である。

一般にツリー(ループを含まない)ダイアグラムでは、プロパゲーターの運動量が運動量保存則で固定できた。

そのことは、積分が運動量のδ関数となり、運動量保存則を満たす点しか、積分の値が残らないことに由来する。

しかし、ループがあると、ループに沿って積分する必要があるため、グルグルと回ってしまい、運動量を固定できない。

固定できないということは、無限まで積分すると、その値は発散してしまう!!

さぁ、困ったゾ!

そこで、待ちにまった朝永先生のおでましである。このような過程を計算するには、繰り込み、という作業をすればよいことを朝永先生は示した。

その業績は精密な実験結果を予測し、ノーベル賞を受賞するに到った。

繰り込みは、現在の素粒子論には、欠かせない概念となっている。

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VACUUM BUBBLE(真空泡)

今日のゼミで、光子のプロパゲーターに関する繰り込みが終了。

終わった後、W君やK先輩と議論。

繰り込みは難しい。どこが難しいかというと、その解釈。やってることは級数展開して、出てきた無限部分を裸の電荷や質量に押し付ける、ということなのだが、どの部分の無限がどの有限値に繰り込まれているかを精確に見極めることが難しい。

* * * * *

真空はからっぽの何もない空間、という概念を多くの人は抱いていると思うが、それは古典論の話であって、量子論(つまりミクロなスケール)ではそうではない。

例えば、次のFeynman diagramを考えてみよう。

2_1

上の線が電子(運動量P)の伝播にあたり、真ん中が光子(運動量k)、下が陽電子(運動量P+k)である。さらにx1とx2は、時空の一点を表す。

矢印が運動の向きであるが、反粒子は逆の矢印で書く。

x1という点で電子、光子、陽電子が生成され、x2という点で消滅している。

これは以前出てきた2次のオーダーのQED(量子電磁力学)で、すべて場を縮約した場合にあたる。

縮約した場は、プロパゲーターになるので、上図のような閉じた形の図形となる。

この現象をVacuum bubble(真空泡)という。

QEDでは自動的にこの過程が現れるので、真空は常にこのような粒子の生成、消滅が起こっているものと理解できる。

しかし、この過程は散乱や崩壊などの結果に影響しない。

なぜなら、物理量を計算するとき、分子と分母にこの寄与が現れるので、約分すると消えてしまうからだ。

他にも4次、6次…と無限のオーダーで出てくるが、それらの効果も全く同じである。

* * * * *

用語解説

プロパゲーター…縮約という操作で、場をつないだ場合に現れる。プロパゲーター(伝播)はグラフの内線として現れるので、実際の観測にかかる現象ではない。プロパゲーター、つまり伝播すると考えられる粒子はすべて仮想的なものである。この仮想粒子は粒子の持つエネルギーと運動量の関係式を満たさない。このような粒子をOff-Shell粒子という。

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電子-陽電子消滅

久しぶりに先生が加わってのゼミ。

いよいよ繰り込み理論に突入だが、フランス帰りのしょっぱなで、いきなり3時間をオーバーする。

先生:「何時や?(時計を見て)もう7時過ぎとるやないか!いつの間に!何時から始めた?」

W君:「4時半です。」

先生:「そうか~全然気づかなかった、ご飯食べに行けへん!!

補足だが、先生行きつけのレストランは、早いことに、7時を過ぎるとメニューが売り切れてしまうそうだ(笑)。

先生:「せっかくやから、この章終わらそう。」

という具合で、何だかんだで4時間ほどのゼミ。しかし、それだけの時間、集中して考えたが、繰り込みの概念をまだしっかり理解できていない。

今日やったのは質量と波動関数の繰り込みだが、それだけでも、混乱する。よく復習しないといけない。

で、明日のゼミは自分の番。まさか前章を1回で終わらせるとは思わなかったので、これより急いで予習に入る(汗)。

* * * * *

電子-陽電子の消滅現象は、クライン-仁科と同じアナロジーで記述できる。

この消滅過程のFeynman diagramは次の形となる。

Photo_9

この図でP1は入射電子の運動量、P2は入射陽電子の運動量、K1、K2は電子と陽電子が消滅して、新たに作られた光子の運動量である。

矢印は粒子の進む向きを表すが、陽電子(反粒子)はFeynman diagramでは実際に進む向きと逆に書く決まりになっている。

この図はクライン-仁科の場合と、非常に似ていることがお分かりいただけるであろう。

だから、求める散乱断面積はクライン-仁科のをちょちょっといじくるだけでよい。

そのプロットを以下に載せる。縦軸は微分断面積で、横軸はターゲットに対する角度に依存するパラメータ(cosθ)である。

    Dcs2_2

この図から、横軸が1に近づくにつれて縦軸が発散することがわかっていただけると思う。

散乱断面積が発散?物理量が発散?

いったいこれはどういうことだろう?

実はこのプロットは高エネルギーの極限をとっているので、電子と陽電子の質量(仮にMとおく)をゼロとしている。だから、1/Mに比例する項があれば発散ということになるが、散乱断面積にはこの項があるため、発散が現れる。

しかし、このグラフの概形で、散乱の様子が大まかだが、わかる。

尚、このあたりの議論はPeskin & Schroederの有名な教科書にも載っている。

* * * * *

用語解説

クライン-仁科…この日記の、クライン-仁科のページを参照。

微分断面積…面積の次元を持つ散乱確率を散乱断面積という。ある特定の角度の周りの、微小立体角への散乱確率を、微分断面積という。

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超対称性入門

ここのところ、毎日雨。梅雨入りの頃は、暑くてすぐに夏が来ると思っていたけど…

W君は、『寒い!』といって長袖を着てきた。それでもまだ寒いという。

先生が今日から復帰する予定だったが、こなかった。

フランス遠征で何かあったのかもしれない。それとも、単なる時差ぼけか、疲れか、台風の影響か。

* * * * *

ということでゼミが延期になったので、今日は超対称性の話を少し。

ボソンフェルミオンの間の対称性を超対称性と呼ぶ。

英語ではSuperSymmetryだが、略してSUSYということもある。

これは平たく言えば、ボソンとフェルミオンは互いにスピンを入れ換えたパートナーが存在する、という理論。

例:

electron(電子、スピン=1/2) → selectron(スピン=0)

quark(クォーク、スピン=1/2) → squark(スピン=0)

photon(光子、スピン=1) → photino(スピン=1/2)

gluon(グルーオン、スピン=1) → gluino(スピン=1/2)

といった具合に、フェルミオンならボソン、ボソンならフェルミオンというペアとなる粒子が存在するというのだ。

この超対称性を理論に組み込むと、陽子の寿命が大きくなったり、Higgsボソンの質量を安定化したり、重力を統一できる可能性を示したりと、数々のご利益がある。

しかし、これらのパートナーはまだ観測されていないので、今の実験で到達できるエネルギーより、さらに大きいエネルギー領域に存在する、と仮定しなければならない。

果たして、超対称粒子は存在するのか?

今後のLHC実験の経過に注目。

* * * * *

用語解説

ボソン・フェルミオン…スピンが整数の粒子をボソン、反整数の粒子をフェルミオンという。

Higgsボソン…フェルミオンに質量を与えると考えられるボソン。LHC実験でその観測が期待されている。

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QED TO SECOND ORDER その1

Wickの定理をQED計算に応用すると、何がわかるか?

2次のオーダーでは場が6つ出てくる。その縮約は全部で6通りあるが、まずは縮約なしの場合を考えてみる。

そのまま場の量子論で計算すると、運動量保存を満たすδ関数が2個出てくることがわかる。

そのFeynman diagramは次の形である。

          Disconnected_12

上の図は上下に完全に分離している。つまり、それぞれ独立に電子の崩壊が起こることを意味する。

P1の運動量を持った電子が光子を放出し、P2の運動量を持つ別の電子に変化する。同じく、P3の運動量を持った電子が光子を放出し、P4の運動量を持つ別の電子に変化する。

このような過程は起こらない。なぜならば、電子が光子を放出して別の電子に崩壊することはできないからだ。

それを許すと、瞬く間にすべての電子が光子に崩壊して、この世界が潰れてしまう!

よって、この過程のS行列に対する寄与はゼロである。

上図は、上下の分離形なので、その寄与をdisconnected termと呼ぶ。

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Wickの定理

場の理論ゼミが進まない(汗)。他のことをしていたら、すぐに時間がなくなってしまう。

気がついたらこんな時間。

もっと効率よく時間を使わねば…

先生が出張に出かけて以来、自主ゼミ形式で場の理論をやっているが、読み合わせが週1になってしまった。

W君は繰り込みの導入とループダイアグラムの章を読み終えているので、先に進みたくてうずうずしている様子。

* * * * *

3、4日前のゼミでWickの定理の証明をした。

Wickの定理とは、複数の場の積を、それらの縮約で分解することができる、ということ。

専門以外の人には意味不明だが、要するに膨大な積を分解して考えることができるということだ。

それぞれ分解された場の積は、物理的描像をそれぞれ持っているわけで、膨大な場の積を簡潔な物理に結びつける、という意味で、この定理は非常に重要だ。

この定理は、ノーマルオーダー積についてと、タイムオーダー積についての2種類がある。

* * * * *

用語解説

縮約…場の積の真空期待値。場の積を真空の状態ではさんだもの。

タイムオーダー積…時間T1とT2に対応した場の積。θ関数というのを使うと場A(T1)とB(T2)の積は

AB=A(T1)B(T2)θ(T1-T2)+B(T2)A(T1)θ(T2-T1)

となる。ここでθ関数とはθ(T1-T2)なら、T1-T2>0のとき1で、T1-T2<0のとき0となる関数である。

ノーマルオーダー積…真空に作用させたとき、必ず全体が0となる場の積。

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Gauge(ゲージ)不変性

波動関数は一般には複素数であるため、シュレーディンガー方程式は位相変換のもとで不変である。

つまり、確率を導く過程において重要なのは、絶対値であるために、その回転角はいくらでもよい、というわけだ。

では、相対論的方程式の場合、これはどうなるか?

もちろん、位相変換は可能である。そこで思い切って、回転角も座標に依存するように拡張してみる。

例えばQEDの場合は、シュレーディンガー方程式のように単純でなく、方程式は不変でない。

そこで、場を位相変換に対して不変になるように変換を行う。

そうすると、方程式は不変になる。

この位相変換と場の変換をゲージ変換と呼び、方程式が不変となることを理論のゲージ不変性という。

このゲージ不変性は理論を構築するのに強力な指針となる。

QEDの場合、電磁場に質量項を加えることもできるが、その場合はゲージ不変とならない。

つまり、電磁場はMassless(光子)でなければならない。

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コンピューターと素粒子物理

朝一の授業だった、I先生の非線形科学が休講になる。

小走りで講義室に着いたI先生の院生が一言―。

「先生が寝坊したみたいなので、休講になります。」

!?

* * * * *

自身のパソコンに Microsoft Virtual C++ をインストールする。

これで大体のコンピューター作業は1台でできるようになった。

レポートや論文を作成する手順としては

1.Mathematica、C++で数値計算

2.gnuplot、その他の描画ソフトでグラフ出力

3.Illustratorで作図

4.Win Shell、TEXで文章打ち

といった流れになる。

しかし、一つのパソコンですべてできるようになったはいいが、メモリが…

Mathematicaでの膨大な数値計算は多少苦しいかもしれない。

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コンピューターの進歩は著しい。

IT業界は依然として沸き立っており、未だとどまる気配はない。

この産業革命以来の“革命”を引き起こしたものは何か―。

それは紛れもなく、物理学である。

コンピューターの部品である、半導体、トランジスタ、電気回路等々は物理学から生まれた技術である。

物理学を究めることが、新たなコンピューター技術を生み出す、といっても過言ではないかもしれない。

素粒子物理は産業や実社会に役立つのか?

これはしばしば素粒子屋に向けられる、業界外の人たちからの質問である。

WWWという仕組みはネットを使う人なら誰でも知っているだろう。

あれを発明したのは、実はヨーロッパのCERN(欧州原子核研究機構)の素粒子・原子核屋である。

膨大な実験データを処理・管理するために発明したそうだが、今や世界中で利用されている。

またMathematicaという数式処理ソフトも素粒子の研究者が開発した。

数式処理ソフトは物理屋はもちろんのこと、経済学や企業などでも、利用されている。

このように、必ずしも素粒子物理が、産業や実社会と無縁だとはいえない。

新たな実験や理論的検証を通して、思わぬ技術が生まれることもありうるのだ。

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フォトン、フォノン、プラズモン?

生協の食堂に行くと、なにやら見慣れない惣菜が…

大豆モヤシ、ゼンマイ。

ホウレン草、ダイコン、ニンジン。

う~む、これは間違いなくビビンバの残り具材。余りを有効活用というわけですか。

しかし、惣菜としてはやっぱり違和感が…

どうしてもビビンバが連想されて、ビビンバにして食べたくなる。。。

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量子の世界は不思議で、量子化をすると様々な粒子(量子)が現れる。

フォトンにフォノン、プラズモンなど。

フォトンは光の量子で、プラズモンはプラズマ(荷電粒子の集団)の量子。

そして、フォノンは音波の量子。

プラズモンやフォノンは観測にかかる量子ではないので、準粒子と呼ばれる。

ではこれらの量子、日本語では何と呼ぶのだろうか。

湯川先生は、メソンを核子と電子の中間の質量を持つ粒子として中間子と名付けた。

これはよく用いられる。

フォトンは光の量子だから、光子と名付ければ都合がよい。

ではフォノンやプラズモンは?

フォノンは音波の量子だから、音子と名付けたらどうだろう?

むむ、しかし呼び方が難しいな…オトコ、オンシ?

どうもしっくりこない。

これは朝永先生が指摘された話。

このように、物理量の命名にはそれなりのセンスが必要である。

マレー・ゲルマンは核子を構成する最小粒子をQuark(クォーク)と名付けた。

小説の中の鳥の鳴き声からとってきたというが、素晴しい響きじゃないか!(と僕は思う。)

このクォークというネーミングはいまや、物理を知らない一般の方でもご存知かもしれない。

物理学においてネーミングのセンスは、実は非常に重要なのである。

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用語解説

メソン…やや専門的にいって、正味のクォーク数がゼロの粒子。2個のクォークからなる。

マレー・ゲルマン…クォーク模型の提唱者。1969年、ノーベル物理学賞受賞。

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Quark(クォーク)のカラー(色)

う~ん、非常に暑い(汗)

昨日あたりから急激に温度上昇したような気がするな~

完全に梅雨を通りこして夏になってる。。。(苦笑)

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物理学で自由度といえば、現象を記述する座標(変数の数)のようなものを指す。

古典力学では単純で、例えば、3次元空間でのボールの運動などは3つの座標(x,y,z)で記述できる。

量子力学では少々複雑になるが、内部角運動量のスピンなどは一つの自由度として考える。

ハドロン(強い相互作用をする粒子)は3つのクォークでできている。通常、運動する座標(x,y,z,t)にスピンを加えたものを波動関数とするが、それではバリオンと呼ばれるハドロンの一種が記述できない。

そこで新しく、クォークにカラー(色)という自由度を持たせてみる。

このカラーは光の三原色のように赤、緑、青が存在するが、白色の状態のみ現実に存在すると仮定する。

すると、赤、緑、青と違った色を持つクォークしか互いに組めないので、赤、赤、青といった組み合わせはなくなる(クォーク3つでバリオンとなるから)。

この模型が実は、よく実験と一致する。

実験と一致すれば、それはモデルではなくなり、現実的な現象となる。

強い相互作用が、量子色力学と呼ばれる所以は、そこにあるのだ。

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用語解説

波動関数…量子の振る舞いを決定する関数。一般には複素数で、量子力学ではその絶対値の2乗が存在確率を与える。

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OPAL測定器

素粒子物理学では、粒子同士を衝突させて内部構造を探る、という実験が行われる。

粒子は電場や磁場をかけて加速するのだが、衝突後はどのように検出するのか?

スイスのCERNという所にOPAL測定器というのがある。

これは衝突した粒子から飛び出すジェット(新たに生成された粒子のシャワー)を検出する測定器である。

内部は層構造になっている。

一番内側はガス層である。これは電荷を持った粒子が通過すると軌跡が残るようになっており、荷電粒子を検出できる。

次は鉛ガラスの層である。鉛ガラスは反応性が高く、γ線や電子、陽電子などの検出に適している。粒子は内部で放出されたチェレンコフ光を捕まえることで検出する。

その外はハドロン検出器、ミューオン検出器などが控える。

鉛ガラスは非常に重く、また、形を整えるのに高度な技術が必要なため、造船所で造られる。

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用語解説

チェレンコフ光…荷電粒子が媒質中を進むとき、その粒子の速度が媒質中の光の速度より速くなると電磁波が放出される現象

ハドロン…強い相互作用(核力)をする粒子

ミューオン…強い相互作用をしない粒子をレプトンというが、その1種。

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クライン-仁科の公式

場の量子論ゼミは今日で量子電磁力学が終了。

次章は繰り込みとループダイアグラム。

加えて、M2のK先輩が修論の準備に入るため、次回から論文読みが週1で入ってくる。

本格的に論文を読むのは、これが初めてなので、とても楽しみだ!

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量子電磁力学において、非常に重要な公式の一つがクライン-仁科の公式である。

これはコンプトン散乱における散乱断面積をツリーダイアグラムからの寄与のみで求めたものである。

以下にツリーレベルでのファインマンダイアグラムを載せる。

3_2

ツリー、つまりループを含まないダイアグラムは上の2種類が考えられる。

左は電子が光子を吸収して、しばらく経った後、光子を放出する過程。

右は電子が光子を放出して、しばらく経った後、光子を吸収する過程。

矢印が粒子の進む方向を表し、実線が電子で波線が光子を表す。

この図形、実はとても便利で、前にも書いたが、この図を描くだけで具体的な物理量(S行列)が導ける。

波線、実線、それらが交わる頂点にはS行列のパーツが割り当てられているので、それを読みとって組み合わせるだけで、S行列を求めることができるのだ。(注:実際にはM行列というのがわかって、それを2乗してS行列を求める。)

S行列が分かれば、散乱断面積もわかり、散乱された粒子の角度分布が求められる。

あとは実験と比較して、理論が実験を再現できているかをみればよろしい。

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場の量子論から直接この公式を計算したら、莫大な時間がかかってしまった!

1日2~3時間で、1週間ほど。途中、γ行列が8つのトレース計算に遭遇して、やる気が失せたが、なんとか最後まで辿り着く。

でも、導けたときの感動は、なんともいいもの。仁科先生が苦労した歴史が感じられるようで、なんだか嬉しい。これこそが理論物理の醍醐味だ!

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仁科先生は理化学研究所の創始者である。

湯川・朝永時代の前に、すでに海外で量子力学の経験を積み、日本にいち早くそれらを伝えた、まさに日本における現代物理学の草分け的な存在であった。

朝永先生は仁科研究室で研究者人生をスタートさせている。朝永先生は仁科先生のことを、海外で外国人と有名な仕事をしたすごい先生、と聞いていたらしいが、その有名な仕事というのがクライン-仁科の公式なのである。

仁科先生はこの公式を導いたとき、間違いばかりが見つかって、本当に苦労したそうだ。導くのに半年もの時間を要している。

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用語解説

繰り込み…無限大の効果を無限大を持って打ち消す計算法。ループを含むファインマンダイアグラムでは必要となる。

ツリーダイアグラム…ループを含まない、ファインマンダイアグラム。このレベルでは計算過程で無限大(発散)は出てこないので、繰り込みは必要ない。

散乱断面積…散乱粒子の角度分布。どの場所にどの程度散乱されたかを表す物理量。面積の次元を持つ。

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トレース計算

Compton散乱に関するトレース計算がようやく終わった。

午後3時頃始めて、終わったのがこの時間!

細かいところまですべてチェックすると、膨大な計算量になってしまう。

トレース計算はもう、当分したくない気分。

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用語解説

Compton散乱…電子-光(光子)の散乱現象

トレース…行列の対角和をとること。フェルミ粒子系では波動関数が4成分で表示されるので、それらの積などを考えると自然に4行4列の行列が必要になる。

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量子電磁力学(QED)

明日、はしかの抗体検査に行くことになった。注射はそれで陰性になった人にするのだそうだ。

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久しぶりに物理の話題。現在ゼミは量子電磁力学の中盤。

量子電磁力学とはその名の通り、電気・磁気の理論を量子論的に扱う学問のことである。

量子化というのは非常に簡単にいってしまえば、デジタル化する、ということである。

(古典的)粒子というのは運動量やエネルギーなどの物理量は連続的、つまりアナログ的である。

それに対し、量子というのは、それらがとびとびの値を持ち、デジタル化されている。

量子電磁力学(英語で略してQED)とはデジタル化された電気・磁気の理論のことなのだ。

QEDでは相互作用を2つに分ける。ひとつは瞬間的なクーロン相互作用というので、電荷を持った粒子同士の散乱の瞬間に導入される。

散乱という現象を扱うときは、散乱の瞬間の相互作用だけを考えればよい。実験(散乱)をする前の電子と陽子は、相互作用をしていないものと考えてよいからだ。

同じ電子と陽子の現象でも、これが例えば、水素原子ならば話は別である。水素原子内では、電子と陽子は常に相互作用を及ぼしあっており、結合状態を作っている。だから安定なのだが、この場合は瞬間的なクーロン相互作用でないため、摂動的に扱えない。

もう一つは放射の影響である。電子-陽子散乱の例では、相互作用の瞬間に光子が放出・吸収される。その相互作用は場の量子論では、光子の場と電子+陽子の場の積で与えられる。

そしてそこから具体的な物理量(S行列)などを計算していく。

最終的には実験結果と照らし合わせて、導入した相互作用の形が正しかったどうかが判別される。

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用語解説

光子…光の量子。光の場はベクトル場であり、古典的にはベクトルポテンシャル。

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核力の脅威!

場の理論ゼミは核力のファーストオーダー計算まで終了。

計算を振り返ってみると改めてその計算量が破壊的であることに驚かされる。

クロネッカーのδが64個出てきたとこの前書いたが、その部分をあっさり飛ばされる。

そりゃないよ~苦労したんやで~…(苦笑・そしてなぜか関西風)

場の理論の計算では厳密解などはほとんど得られない。これは量子力学と同じである。

だから摂動論を使うことになるのだが、ファーストオーダーでこの計算量じゃ、とてもじゃないが高次の解析はできない。

しかも、ファーストオーダーの結果は観測値より10桁も小さい値であるからてんで話にならない。

おそるべし!核力計算!

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用語解説

核力…原子核内部に働く力のこと。

厳密解…方程式を数学で解いたりして得られる厳密な解のこと。

摂動論…近似で答えを求めること。例えると、985円の品物を1000円と見積もって買い物をする感覚。これを最初の近似(ファーストオーダー)と考えると、細かいお金があったから次は990円で買えると考えてみる。するとより985円に近くなる。このような二番目の近似をセカンドオーダーという。同様に近似の精度を高次(高いオーダー)まで見積もることで、より正確な値を求めることができる。

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π中間子相互作用~アイソスピン~

原子核の内部ではどのような相互作用が働いているのか?かつてそれを疑問に思った湯川博士は中間子論と呼ばれる独自の理論を展開して、世界を席捲した。

中間子論とは核子間に働く相互作用をπ中間子の媒介によって生じるとする理論である。

実験によると中性子と中間子、陽子と中間子の相互作用が同じカップリング定数で記述できることがわかっているが、それは何を意味するのだろう?

対称性の話を以前にしたが、カップリング定数が同じであるということはそこに何らかの対称性が隠れているということである。それは今の場合、アイソスピン対称性と呼ばれている。

アイソスピン空間という抽象的な空間を導入することで、陽子-中間子、中性子-中間子の相互作用を統一的に記述できる。

つまり陽子-中間子相互作用のカップリング定数をA、中性子-中間子相互作用のカップリング定数をBとすると、アイソスピン空間を導入することで

A=B

が導かれるのだ!これは同じ力が働くことを意味し、中性子と陽子が極めて似た性質を持つ、いわば双子の兄弟(ザ・たっち)のような関係であることを意味する。

アイソスピンとは抽象的な概念だが、驚くべき自然の一端を我々に教えてくれる。

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用語解説

カップリング定数…相互作用の大きさを決定する定数。

アイソスピン…抽象的な数学的概念。スピンと同じ群論に従うことからその名がついた。

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同一粒子の散乱問題

同一粒子の散乱問題がうまく解析できない!中性ボーズ粒子でこんなに大変だったらフェルミ粒子だとどうなるんじゃ!まったく…

どうも(ファクター)因子の調整がうまくいっていないみたいだ。同一粒子だと粒子同士の区別がつかないから掛け合わせが何通りあるか、正確に数えないといけない。それに時間順序積や正規順序積まで勘定すると、どうしても2だけ余分なファクターがついてしまう。これは師匠(教授)いきかもしれない。

と、冒頭から専門家以外の方には意味不明の泣き言を書き連ねてしまったが、以下に用語の解説をしておく。

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中性ボーズ粒子…ここでは整数スピン0、1、2…(スピンとはイメージとしては自転に対応する自由度)を持ち、電荷をもたない粒子のこと。

フェルミ粒子…半整数スピンの粒子。電荷を持つこともある。

時間順序積…時間が大きい順に積をとること。時間t1とt2がある場合、t1>t2とt1<t2の2通りを考えないといけない。

正規順序積…粒子を生成させる数学的な作業はa†、消滅させる作業はaという記号でそれぞれ表される。この2つの記号の積a†×aを正規順序積という。a×a†は正規順序積ではない。

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